
毎年10月、オランダ南部のアイントホーフェン市で開催されるデザインの祭典「ダッチ・デザイン・ウィーク(DDW)」が今年も盛大に開かれました。23年前に始まった同イベントは年々規模が拡大し、現在は世界中から2,600人のデザイナーが出展する一大イベントに発展しています。
今年のテーマは「Real Unreal(現実と非現実)」。私たちは現実と非現実を理解しているのだろうか……という問いが投げかけられました。出展された作品は、建築やインテリア、ファッション、小物、食品から都市空間、ゲーム、社会コンセプトまで、実にさまざまですが、今年はそのテーマゆえ、特に「AI」を使ったものが目立ちました。
DDWのメイン会場のひとつである「Strijp-S(ストライプS)」の広場。30万人以上が訪れた。
「AIでどう作品を作るか?」人間とAIの対話を模索する
AI技術が進化する現在、多くのデザイナーたちがAIを作品に利用しています。今年のDDWでは、AIが作成した詩やアート、音楽、ミュージックビデオ、ドキュメンタリーなどが展示され、AIの能力レベルがかなり高まっていることが実例として見られました。
インスタ・アーティストMarc Tudiscoさんの作品「Project Human」
こちらはインスタグラムで作品を発表している「インスタ・アーティスト」、Marc Tudiscoさんの「Project Human」。AIで生成した作品で、身体改造とアイデンティティの境界を表現しています。インスタグラムのビューアーからどんなリアクションがあったかも展示しており、「どうやって作っているのか、プロセスを知りたい」というコメントも。
アートギャラリーの「MU」では、AIの生成によるさまざまな作品を展示。Paul Trillo氏が監督・編集したWashed Outのミュージックビデオ「The Hardest Part」などが紹介されました。Trillo氏は「Open AI」でテキストから動画を生成する「Sora」を使って作品を作ったパイオニア的存在です。若いカップルが学生時代に出会い、結婚し、大人の生活に入っていく過程を描いたこのビデオクリップは、AIのクリエイティビティに関する議論を巻き起こし、映像アーティストの職もAIに奪われるとの 懸念も生みました。
このビデオ作品を作るに当たって、Trillo氏は長いプロンプトでAIに指示を出し、約700本のクリップで230分の映像を生成。それを最終的に4分に編集したといいます。ここでは、AIと人間のコミュニケーションに使う新しい言語としての「プロンプト・イングリッシュ」も一部公開されました。