
サービスブループリントとは?サービスの提供フロー全体を可視化するフレームワーク

サービスブループリントの例
サービスブループリントとは、サービスの提供フローを可視化するフレームワークで、顧客との接点のみならず、サービス提供者側の業務フローやシステムの動きを含めた全体像を把握することができるの が特徴です。
サービスブループリントを用いることで、プロダクトやサービスの問題点を発見しやすくなり、顧客満足度を高めるための改善点を明確にできます。また、チーム内での理解を深められ、各ステークホルダー間の連携をスムーズにする助けとなります。サービスブループリントは、単にプロセスを可視化するだけではなく、サービスを構成するさまざまな要素との関係性を明らかにすることで、より質の高いサービス設計へと導きます。
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サービスブループリントとカスタマージャーニーマップの違い

サービスブループリントとカスタマージャーニーマップは、どちらも顧客中心のサービス設計に欠かせないツールですが、焦点とする範囲に違いがあります。
カスタマージャーニーマップは、主に顧客の視点からサービスやプロダクトとの接点を時系列に沿って描き、顧客の体験を可視化します。このフレームワークは、顧客が抱える問題や喜び、フラストレーションのポイントを明らかにし、顧客体験を改善するための洞察を提供します。
一方サービスブループリントは、より広範な視野でサービス全体を捉え、カスタマージャーニーマップで浮かび上がった顧客の体験に対して、サービス提供側の内部プロセスやシステムがどのように関わっているかまで示します。これにより、顧客の体験だけでなく、その裏側でおこなわれているサービス提供者の活動も明確になり、サービス全体の設計最適化も可能です。
ふたつのフレームワークは使い分けることもありますが、顧客体験をより深く理解する場合は、組み合わせて使うこともあります。
サービスブループリントとユーザーストーリーマッピングの違い

サービスブループリントとユーザーストーリーマッピングは、ユーザー中心の設計をおこなう際にもちいられる手法ですが、そのアプローチと目的に違いがあります。
ユーザーストーリーマッピングはアジャイル開発において、ユーザーが体験する具体的な「ストーリー」を時系列に沿って整理し、開発チームがユーザーのニーズを深く理解しやすくする手法です。ペルソナに焦点を当て、その行動や目標を明確にして、製品やサービスが提供すべき価値を特定します。
一方サービスブループリントは、ユーザーの体験を基点にしつつも、その背景にあるサービス提供側の内部プロセスやシステムの動きを含めて全体像を視覚化します。顧客との接点だけでなく、サービスを支えるバックオフィスの活動や、それらがどのように連携しているかも表現されるため、サービスの改善点や効率化の機会を全体的に把握できます。
ユーザーストーリーマッピングが開発プロセスにおける具体的な機能やタスクの優先順位付けに寄与するのに対し、サービスブループリントはより戦略的な視点からサービスの設計や改善を検討する際に有効です。
サービスブループリントをビジネスに組み込む目的やメリット

ここでは、サービスブループリントを活用するメリットについて紹介します。
プロダクトの課題や改善点が特定できる
UX最適化のヒントが得られる
ステークホルダーとの適切な連携フローが理解できる
1. プロダクトの課題や改善点が特定できる
サービスブループリントを利用することで、プロダクトに潜在する具体的な課題や改善点を特定できます。顧客の旅路とそれに対応する内部プロセスを可視化することにより、どのタッチポイントの業務プロセスに問題があるのか、またそれが顧客にどのように直接影響しているかが明らかになります。
単に問題を表面的に捉えるのではなく、根本的な原因を突き止める手助けとなり、より効果的な解決策を導き出せます。
2. UX最適化のヒントが得られる
サービスブループリントをもちいると、UX最適化に向けた貴重なヒントが得られます。顧客の体験を細分化し、それぞれのステージでの感情や反応を深く理解することで、ユーザーが本当に価値を感じるポイントやフラストレーションを感じる瞬間を特定できます。
これらの洞察から、UIの改善やユーザーのニーズに応える機能の追加など、具体的なUX向上策を導き出せるようになります。
3. ステークホルダーとの適切な連携フローが理解できる
サービスブループリントにより、プロジェクトに関わるステークホルダー間の連携フローが明確になります。このフレームワークは、各関係者の役割と貢献を視覚的に示すことで、誰がどのプロセスに責任を持ち、どのように協力しているかを理解しやすくします。
これにより、チーム内のコミュニケーションが促進され、プロジェクトの進行において誤解や情報の齟齬が減少します。結果的に、プロジェクトの効率が向上し、目標達成に向けたスムーズな協働が可能になります。
サービスブループリントの構成要素
サービスブループリントの構成要素には、「カスタマーアクション」「フロントステージアクション」「バックステージアクション」「サポートプロセス」が含まれます。
それぞれの要素は、以下のように定義されます。
カスタマーアクション(ユーザー行動やサービスとのタッチポイント)

カスタマーアクションはサービスブループリントにおいて、ユーザーの体験やサービスとの接点を表します。これには、ユーザーがサービス利用時に取る一連の行動ややりとりなど、以下のようなプロセスが含まれます。
Webサイト上での注文
店舗への来店
問い合わせをした回答メールの確認
カスタマーアクションでは、ユーザーの目標達成に必要な活動全体を捉え、それを時系列に沿って可視化します。サービス提供側はこの情報をもとに、ユーザー体験を改善するための洞察を得られます。実際には、観察調査やインタビュー、カスタマージャーニーマップなどを通じてカスタマーアクションを特定し、サービスブループリントに反映させます。
フロントステージアクション(ユーザーと接する企業の活動)

フロントステージアクションは、顧客と直接接する企業の活動を指し、サービスブループリントにおいて重要な役割を果たします。たとえば、以下のような顧客が直接目にするサービス提供プロセスが含まれます。
店舗での接客
製品のデモンストレーション
商品発送メールの配信
オンラインサポート
ユーザーの体験と密接に関連し、サービスの質を左右する要素となるため、フロントステージでの行動は顧客満足度を高めるために重要です。サービスブループリントでフロントステージアクションを明確にすることで、企業は顧客とのすべての接点で一貫した高品質なサービスを提供できるようになります。
バックステージアクション(ユーザーと接しない企業の活動)

バックステージアクションは、顧客の視界から隠された企業の内部活動を指します。たとえば、以下のような工程が該当します。
注文商品のピッキング
検品
梱包/発送
顧客と直接のコンタクトはないフェーズですが、顧客が最終的に受けるサービスの質には大きく影響を与えます。バックステージアクションの最適化は、フロントエンドでの顧客体験の向上に不可欠であり、効率的なバックエンドプロセスはサービス提供の迅速化と品質保持に寄与します。
サポートプロセス(全工程を支える仕組みやシステムの動き)

サポートプロセスは、サービスブループリントの中で全工程を支える根幹をなす仕組みやシステムを指します。具体的には、以下のような工程を指します。
顧客データベースの管理
在庫管理システムの更新
伝票番号の発行
サポートプロセスは、フロントステージとバックステージの活動をスムーズに連携させる役割を果たします。サポートプロセスが適切に機能していない場合、サービス提供に遅延や品質の低下が生じる可能性があります。そのため、これらのシステムやプロセスの最適化と効率化は、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。サービスブループリントを通じてサポートプロセスを明確にすることで、サービス提供の弱点を特定し、改善策を講じることが可能になります。
サービスブループリントの作り方
サービスブループリントの作成は、明確な目的設定から始まり、顧客のアクションや企業の内外での活動を段階的にマッピングしていくプロセスを踏みます。ここでは、以下6つのステップにわけて作り方を解説します。
作成目的を明確にする
カスタマーアクションをマッピング
フロントステージアクションをマッピング
バックステージアクションをマッピング
サポートプロセスをマッピング
必要に応じて追加要素(時間・感情など)を含める
STEP1. 作成目的を明確にする
サービスブループリント作成の最初のステップは、作成目的を明確にすることです。これは、プロジェクトのゴールを特定し、チーム全体が共有するビジョンを設定する過程です。目的がはっきりしていると、サービスブループリントの範囲と焦点が定まり、プロジェクトが成功に導かれます。
たとえば、顧客満足度の向上や特定のサービスプロセスの効率化、あるいは新サービスの導入が目的になり得ます。明確な目標設定は、プロジェクトの進行において参照点となり、効率的なプロジェクト管理を支援します。
STEP2. カスタマーアクションをマッピング
目的が設定されれば、次にカスタマーアクションを詳細にマッピングします。顧客がサービスを利用する際の全行動や、タッチポイントを網羅的に整理することが重要です。顧客のサービス利用プロセス全体を時系列に沿って追い、各接点での顧客の行動や選択、感情を記録します。
このプロセスでは、顧客調査やインタビュー、観察などの方法を通じて得られた実データをもとに、実際の顧客 体験を可能な限り正確に反映させます。マッピングをおこなうことで、顧客がサービスとどのようにやり取りしているか、どのタッチポイントが顧客満足に影響を与えているかを理解し、それに基づいて戦略を策定できます。
STEP3. フロントステージアクションをマッピング
フロントステージアクションのマッピングでは、顧客が直接経験するサービス提供の側面を可視化します。この段階では、顧客がサービスを利用する際に直接触れ合う部分に焦点を当て、それらが顧客体験にどのように影響を与えるかを理解することを目的に書き出します。そのため、顧客と企業の接点である各タッチポイントでの企業側の行動や反応を詳細に記録することが重要です。
たとえば、店頭での接客やオンラインでのカスタマーサポート、商品やサービスの提示方法などが含まれます。フロントステージアクションを明確にすることで、顧客がサービスとどのように対話し、企業が顧客の期待にどのように応えるべきかの全体像が明確になります。
STEP4. バックステージアクションをマッピング
バックステージアクションのマッピングでは、顧客には見えない企業内部での活動を明らかにします。これには、製品やサービスの準備や発送処理など、顧客体験を支える裏方の作業が含まれます。バックステージアクションを特定することで、サービス提供の効率性や問題点を把握し、顧客が最終的に受けるサービスの質にどのように影響するかを理解できます。
このステップを整理することで、サービスの全体的な流れの理解が深まるため、顧客満足度を向上させるための重要な洞察も得られます。また、内部プロセスの最適化や必要なリソースの配置調整なども検討できるようになります。
STEP5. サポートプロセスをマッピング
サービスブループリントにおけるサポートプロセスのマッピングは、サービス提供を支える基盤となるシステムやプロセスを特定する作業です。サポートプロセスには、情報技術システムやサプライチェーンシステム管理など、サービス提供に不可欠なシステムや仕組みが含まれます。
サポートプロセスを明確にすることで、サービスの質と効率性を高めるための隠れた機会の発見にもつながります。また、課題点が見つけられれば、組織全体の連携がスムーズになるような戦略を立てることも可能になります。
STEP6. 必要に応じて追加要素(時間・感情など)を含める
サービスブループリントの最終段階では、顧客の体験をさらに深く理解するため、時間や感情などの追加要素を含めます。
時間要素は、サービス利用の各ステージで顧客がどれだけの時間を費やしているかを示し、待ち時間やサービスの速さが顧客満足に与える影響を評価します。感情要素は、顧客がサービスの各ポイントで感じる喜びや不安、イライラなどを捉えて感情の起伏をマッピングすることで、顧客エンゲージメントの向上ポイントを特定します。
これらの追加要素をブループリントに組み込むことで、サービスデザインを顧客の真のニーズにさらに密接に合わせ、顧客体験を全体的に向上させるための洞察が得られます。
サービスブループリントが作成できる便利なツール3選
サービスブループリントを作成するにあたって、自作をしたい場合はデザインツールの導入がオススメです。ここでは、以下3つの外部ツールをご紹介します。
Miro

https://miro.com/ja/
『Miro』は、多様なプロジェクト管理や製品デザインに対応するビジュアルワークスペースです。Miroはチームがリアルタイムでアイデアを共有し、共同作業をおこなうことを可能にします。Miroの特徴は、その拡張性の高さにあり、「Asana」「Zoom」「Slack」といった多数の外部ツールとの連携も可能です。また、作成したデータの出力フォーマットも幅広く対応しています。これにより、ユーザーは既存のワークフローをそのままに、Miroを追加のコラボレーションツールとして組み込めます。サービスブループリントの作成においても、Miroはアイデアの可視化やプロセスの整理に役立ち、プロジェクトの効率化を支援します。
Strap

https://product.strap.app/
『Strap』は、株式会社Goodpatchによって開発された日本初の国産オンラインホワイトボードです。チームのコラボレーションやアイデア共有を目的としたこのツールは、リモート環境やオンライン会議での作業効率向上になります。無限のキャンバス上で、思考の整理やアイデアの形成を自由自在におこなえるため、クリエイティブなプロセスが大きく促進されます。また、組織内での利用を想定した管理機能やセキュリティ対策も充実しており、大規模のチームでも安心して利用できる設計となっています。多くの企業やプロジェクトで活用されている事例もあり、国産ツールを導入したい方にはオススメです。
FigJam

https://www.figma.com/ja/figjam/
『FigJam』はFigmaによって提供されるオンラインホワイトボードです。チームが一緒に図を描いたり、ブレーンストーミングをしたり、アイデアを整理するのに最適な場を提供します。とくにデザインチーム間のアイデア共有や意思決定過程をスムーズにすることを目的としており、リアルタイムでのコラボレーションが可能です。300以上の既製テンプレートを利用してすぐに作業を開始でき、AIの力を借りて会議テンプレートの作成やアイデアの可視化などもおこなえます。また、Figmaとシームレスに連携し、初期のアイデアから最終的なデザインまでのプロセスを簡単に管理できるため、プロジェクトの効率を大幅に向上させられます。Figmaをすでに利用している企業であれば、追加のセットアップなしでFigJamを活用することが可能で、無料プランも提供されています。
まとめ
この記事では、サービスブループリントの重要性と具体的な作り方について解説しました。サービスブループリントをもちいることで、ビジネスが顧客体験を深く理解し、内部プロセスの効率化を図ることが可能になります。効果的なサービスブループリントの作成は、より良い製品やサービスの開発に直結します。プロジェクトに導入する際は、ぜひ記事内の情報を参考にしていただければ幸いです。
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