インタビュー

ゆっくり、確かに夢に近づく。デザイナーの暮らしをつくる「ファイリング」の妙

最終更新日:2024.06.24
ゆっくり、確かに夢に近づく。デザイナーの暮らしをつくる「ファイリング」の妙

器や家具、身の回りのモノにこだわって丁寧に暮らしたいけど、仕事や子育て、その他にとにかく時間がなくて、なかなか環境が整えられない。仕事も子育ても大事。でも自宅を居心地よく整えたりオン・オフをうまく切り替えられたりする時間も大切だと思うのです。

京都在住のデザイナー・朝倉由美さんは、デザイナーの視点を生活に活かして活動を続けられています。美しい写真で構成されるブログに綴られるのは、丁寧にモノを選ぶプロセス。リビングにも馴染むオフィスチェアーを探してITOKIの「vertebra03」にたどり着いてから念入りにシミュレーションする姿勢に感心してしまいます。

お話を聞きに伺って自分が忘れていたと気づいたのは、そうしてコツコツと暮らしをつくる楽しさでした。それが結果的に、デザイナーを目指した原点にも繋がっていました。

「本屋さんにデザインした本が並んだらうれしい」とデザイナーに

朝倉由美(あさくらゆみ)さん

京都在住のデザイナー、朝倉由美(あさくらゆみ)さん。ゲームが好きで『あつまれどうぶつの森』でマイデザインをつくるのにこっていたら、そのXアカウントのフォロワーが2万人になり仕事にも繋がったそう。

―― 朝倉さんは現在、フリーで活動されているんですよね。

2011年前後に独立して、結婚後は自宅でお仕事をスタートしました。その頃からずっとリモートワークで、店舗のロゴやメニューなどのグラフィックデザイン、オンラインショップ・WordpressなどのWebデザインの仕事を続けています。

私のブログやサイトを見てお声がけいただくことが多いです。

―― 朝倉さんが「デザイナーになろう」と思ったきっかけは何だったんでしょうか?

高校のとき美術系の学科だったのですが、いよいよ進路を考えはじめる時期に「本屋さんにデザインした本が並ぶといいなあ」とふと思ったんです。

それからグラフィックデザイナーとして就職して、神戸のデザイン会社に転職するときに「面白そう」とWebデザインを担当することに。そこでコーディングが好きになりました。

その会社では自社で経営するカフェのメニューなど紙モノのデザインや、商品撮影も担当しました。

今回お話を聞いたデザイナーさん
朝倉由美さん

神戸市生まれ、金沢美術工芸大学視覚デザイン科卒業。横浜のデザイン事務所に5年勤務後、神戸でカフェ・雑貨店を運営するデザイン事務所に転職。店舗のグラフィックやサイトのデザイン、雑貨のスタイリング撮影を経験する。結婚を機に京都にて独立し、雑貨や器のお店などのロゴデザインやWebデザイン、グラフィックデザインを手がける。

ヨーロッパの蚤の市で出合った素敵なモノをファイリング

yumiasakura.com

https://yumiasakura.com/category/favorite

―― 朝倉さんのブログを見ていると、素敵なモノに囲まれる暮らしの雰囲気が伝わってきます。

今はなかなか子育てが大変で、蚤の市などで良いものに巡り会う時間が取れないのが悩ましいですが……マルシェや陶器市に通うのが昔から好きでした。

やはりデザイナーとして、家のなかで見えているモノにはこだわりたいな、という思いはずっとあります。と言いながら、男の子二人が遊び回ると目に入りたくないものが散らばるんですけど(笑)。

―― アイデアの源泉はどんなところにあるんでしょう?

朝倉さんのファイリングの一部

朝倉さんのファイリングの一部。海外の蚤の市で見つけたという、切手やフライヤーなど。

海外旅行に行くと、よく蚤の市に行って「良いな」と思うデザインのフライヤーやパンフレットなどを見つけてはコツコツファイリングしてきました。

メモや参考にするWebサイトのブックマークは以前はEvernote、今はNotionを利用しています。

XやInstagramのフィードを見てインスピレーションをもらうことが多いですね。

以前ほど見なくはなりましたが、Pinterestのピンを見返すと、つくる意欲が沸いてきます。

リビングにある本棚

リビングにある本棚に、お子さんの本と混じって今までのファイリングがずらっと。

憧れの仕事場のイメージをコツコツ醸成

―― 仕事場の家具はいつもこだわって見つけられているんですよね。そのアイデアもコツコツ集められてきたんでしょうか?

独立する前からPinterestで憧れの仕事場のビジュアルをピンにまとめていて。そのイメージに近づけようと、アイテムを揃えてきました。

ITOKIの「vertebra03」

朝倉さんが生地やフレームの組み合わせを見るためPhotoshopで合成したり、実際に座ったりして購入を決めたITOKIの「vertebra03」。(https://yumiasakura.com/6809 より)

ビジュアルはやっぱり大事ですけど、ほしいモノが輸入コストなどもあって手に入らないことがあります。最近使っているイスはたまたまUNICOで近いイメージの「PIIVO」という商品があったので購入しました。

テーブルの天板は配線を通す穴まで開けてくれる業者さんに依頼しています。

朝倉さんのワークスペース

朝倉さんのワークスペース。仕事時間はお子さんのお迎えまでだいたい10~17時ごろとのこと。

それまではイームズチェアを使っていたんですが、長時間座ると腰が痛くなってくるので……今はたまにバランスボールを使って集中する時間も作っています。

Switchは一人1台のゲーム一家。Alexaで「30分でテレビを消す」自動化も

―― お子さんのおもちゃもきれいに収納されていますよね。

きれいにまとめられた収納

最近はマインクラフトばかりしている長男も、昔につくったLEGO作品には思い入れがあるようでそういうものは見える場所に飾っています。次男はロボットのおもちゃで遊んだりしていますが、おもちゃはIKEAの収納棚を使ってなるべく表に出ないように工夫しています。

―― 気になっていたんですが、仕事場のデスク脇にNintendo Switchがありますよね。

仕事の合間にもやりますし、寝る前にもやります。うちは一人1台なんです。

仕事場のデスク脇に置かれたNintendo Switch

https://yumiasakura.com/8187より

―― ゲーム一家なんですね!

小学生のころからゲームが好きで、やり過ぎて親にファミコンを隠されてしまったほどでした。でもこっそりと朝5時に起きてやってまた何事もなかったように隠していました(笑)。高校生以降はしばらく遠ざかってましたが、子どもができてから『スプラトゥーン』でまた火がつきました。

―― お子さんが見ているなかでゲームをやる時間ってとるのは大変じゃないでしょうか……?

私は子どもがYouTubeを見ているときにやっています。あとは子どもが寝たあとにやるんですが、起き抜けに見られて「ずるい!」とよく言われます(笑)。

―― YouTubeをどれぐらい見せるかって難しいですよね。

うちは「30分見たら20秒外を眺める。そうしたら続けて見てもいい」というルールにしてから、不満はなくなりました。

あとはAmazon Alexaで定型アクションを組んで、Amazonエコーとブラビアと連携させて「30分テレビを観たら自動的に電源が切れる」ようにしています。

Switchもペアレンティングコントロールを利用して、30分遊んだらスリープに入るように設定しました。

―― 自動化できるといいですね。早速マネしてみようと思います。

Alexaの「30分でテレビを消す」定型アクション

朝倉さんが見せてくれた、Alexaの「30分でテレビを消す」定型アクション。

アレクサに「ドラえもん時報」というスキルがあるので、「21時だよ、寝よう」とか「7時45分だよ、学校に行く時間だよ」と設定すると割と気づいて行動してくれます。やっぱり親が言うだけだと動かないことが多いんですよね。

学生時代つくった絵本をZINEにして発表

―― 朝倉さんとしては、今後はどんな仕事や生活を続けていきたいと考えられますか?

今までどおり自分が好きなライフスタイルをつくり続けていきたいです。仕事としては小さなお店のロゴからWebサイトまで一貫してデザインできたらな、と思います。実店舗のデザインにもかかわってみたいですね。

大学時代に課題でつくった絵本

あとは大学時代に課題でつくった絵本を作り直す作業を進めています。当時は先生に評価していただいて、自分でも客観的にアイデアが気に入っているので。印刷会社さんと調整しながら、Art Book Osakaに向けて制作中です(編注:取材当時)。

大学の課題でつくった絵本『すすめ、すすめ』

大学の課題でつくった絵本『すすめ、すすめ』。「21cm四方、全8ページと鬼のような縛りだった」と朝倉さん。ページをめくるたび味方がいなくなり敵が増えていく、シンプルだからこそ刺さる構成。

―― この絵本のアイデアはすばらしいですね!

自分の作品や本をつくるのは初めてで「売れないだろうな」とか「どう出せばいいのかな」と迷ってばかりですが、趣味ではなくて「出さなきゃ」という使命感で動いています。

でもそれも楽しいなと思っています。

取材を終えて

冒頭で「自分がデザインした本が本屋さんに並ぶといいなあ」と言われていた朝倉さん。取材するうち、自然と夢の方向に向かわれているんだなあと感慨深いものがありました。

朝倉さんはご自身の好きなモノのイメージが明確で、お子さんと過ごす空間にもそのエッセンスがしっかり含まれていました。ZINEの印刷会社の選定も家具選びも、コツコツと自分の「好き」を集めてイメージに近づいていっている印象の朝倉さん。どうも見せていただいたファイリングが原点にあるように思います。小さなアクションなら自分の生活の中でもマネできそうです。

インタビュー
ライフスタイル
執筆平田提

Web編集者・ライター、マーケター。株式会社TOGL代表取締役。オンラインもオフラインも編集しており、兵庫県尼崎市武庫之荘でつくれる本屋「DIY BOOKS」を運営しています。

撮影佐伯亜由美

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