インタビュー

年間300回以上のユーザーインタビューでリアルなトレンドを知る。フリューのプリ機デザイナーが若者の「かわいい」を捉え続けられる理由

最終更新日:2025.10.16
年間300回以上のユーザーインタビューでリアルなトレンドを知る。フリューのプリ機デザイナーが若者の「かわいい」を捉え続けられる理由

プリントシール機(以下、プリ機)が誕生してから30年以上が経ちました。大人世代は「学生の頃に撮影したな」「最近のプリは目が大きく加工されるよね」といった印象を持っている人も多いでしょう。しかし、プリ機は一過性のブームを超えて、30年以上時代と共に様々な進化と変化を遂げ、日本の文化として定着しています。そんな日本のプリ文化を牽引するフリューで、デザインチームは変わり続ける最先端の「かわいい」をどのように追い求めているのでしょうか。デザインチームのマネジメントをする飯尾陽介さんと、プリ機のデザインリードである牧野訓子さんに話をうかがいました。

今回お話を聞いたデザイナーさん
飯尾陽介さん
飯尾陽介さん

WEB系コンテンツやゲームの制作会社を経て、2015年にフリューに入社。デザイナー、イラストレーターとしてゲームアプリ、UI/UXデザイナーとしてピクトリンクを中心に複数のアプリ制作を担当。今年度からプリントシール機の事業部門に所属し、これまで培った知見を活かしながら、ガールズトレンド事業におけるデザイナーの成果と働きがい改善に向けたマネジメントに従事している。

牧野訓子さん
牧野訓子さん

自動車メーカーや住宅関係の広告デザイン会社を経て、2003年にオムロンエンタテインメント(2007年MBOによりフリューとして独立)に入社。プリントシール機の外装をはじめとしたデザイン開発業務、店舗デザイン開発業務などを長きにわたり担当。現在は、専門性を発揮するエキスパート職として、プリントシール機のみならずフリューの"かわいい"の表現に関して、デザインクオリティの維持・向上に取り組んでいる。

韓国風から日本のトレンド感まで。徹底したユーザーリサーチが支える「感性」のデザイン

―― 「かわいい」の定義は、時代やトレンドによってどのように変化していますか。

牧野: 10年くらい前まではプリ機の「かわいい」は二極化していて、いわゆるギャルっぽいものと、キャラクター的なかわいいものでした。ただ、最近は街を歩く若者のファッションのテイストも幅広く、「かわいい」の定義は非常に多様化しています。

プリ機のデザインをするときは、例えば、韓国×モノトーンなどの細分化した「かわいい」のジャンルを企画担当と相談しながら設定し、世界観と写りの仕上がりイメージに合わせてメインビジュアルを撮影します。

飯尾: 最近のプリ機の外装は大きく写真が使われていて、押し出したいイメージや世界観を表現しています。ユーザーは外装のイメージを見ながら、好みのプリ機を選びます。

私自身は長くWEBやアプリといったデジタル領域のデザインに携わってきたのですが、最近プリ機のデザインチームのマネジメントも担当するようになり、プリ機のデザイナーがその時々の最先端のトレンドをデザインに落とし込むにあたっての努力とこだわりに改めて驚きました。

牧野: 私たちは同じような年齢層のユーザー向けの他の商材の中でも、特に等身大のイメージをしっかりと把握してよりリアリティを追及しているという自負があるので、「かわいくなれる」と支持をいただいているのではないかと思います。

―― 等身大のユーザーを知るために、どのようなリサーチをされていますか?

牧野: ユーザーである若年層とのコミュニケーションを大切にしています。会社としてモニターと直接つながる接点を持っていて、担当するプリ機のターゲット層に近い方にヒアリングを行っています。

他には、若年層が情報発信をしているSNSアカウントをチェックして、ターゲットと同じ目線で常に最新のトレンドをリサーチしています。若年層に流行っているモノやコト、どんな日常を送っているのかなど、リアルな情報にこまめに触れることが大事です。デジタル上だけでなく、女子高生が集まるスポットにも実際に行くなどしてユーザーへの理解を深めています。さらにはデザイナーそれぞれがリサーチした内容を社内で共有しあい、デザイナー自身がユーザーの価値観を真に理解できる状態になるよう心がけています。

飯尾: 私たちは日頃からユーザーインタビューに力を入れていて、社内にインタビュールームもあります。実施頻度も高く、総計すると年間300回※を超えるくらいのボリュームになります。

(※2024年実績)

―― 年代の離れたユーザーとコミュニケーションする上で気をつけていることはありますか?

牧野: ユーザーインタビューを行うフリューのメンバーは皆、相手のペースに合わせてお話しするように意識しています。大人は自分の知りたいことをどんどん質問しがちですが、若い子に圧迫感を与えてしまうこともあります。ハキハキ答えてくれる人ばかりではないので、相手の特性を見極めながら、少しずつ仲良くなっていくようなコミュニケーションを心がけています。

―― 移り変わる「かわいい」のトレンドを予測するときの難しい点や面白い点はありますか。

牧野: プリ機はコンセプトを決めてから発売するまでの期間が1年から1年半ほどかかるので、リリースされるときのトレンドを予測する必要があります。SNS等も参考にしながら、それぞれのトレンドが一過性になりそうなのか、長く続いていきそうなのかを見極めるようにしています。

例えば、「Y2K※」が流行り始めたときは、さまざまなブランドがイメージや商品を出し始めていたので、長く続くブームとなるのではないかと感じました。他には、韓国系のブームも日々アップデートされながら続いています。

長く続きそうだと思ったトレンドについては、ユーザーインタビューでくわしくヒアリングし、どういった雰囲気がより今っぽいのかを確かめながら、デザインに取り込んでいます。

(※Y2K…西暦2000年前後のファッションや文化のこと)

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プロジェクトメンバーの想いを具現化して、「かわいい」をデザインする

―― プリ機の企画からリリースまでの流れについて教えてください。

牧野: プリ機は、新機種のほかに、新機種の骨組みはそのままでソフトウエア等の中身や外装を変えるバージョンアップ機の2種を出しています。リリース期間は新機種で1年以上かけています。グラフィックデザインでここまで時間をかけている商品はめずらしいと思います。

流れとしては、まず企画担当が商品コンセプトを考え、それを受けてデザイナーがデザインコンセプトを考えます。ターゲットユーザーの分析、ペルソナ策定をした上で、どんなイメージがターゲットに響くのかを決めていきます。そして、プロトタイプを作ってユーザーインタビューでヒアリングを行い、チューニングをするというサイクルを繰り返していきます。

―― プリ機のデザイナーがデザインする対象は、どのようなものがあるのでしょうか。

牧野: プリ機デザイナーの業務は大きく二つにわかれていて、一つはプリ機の外装デザインです。ユーザーは外装をヒントにして自分が撮りたいイメージに近いものを選ぶので、外装デザインはそのプリ機で表現したいテーマを強く前面に押し出します。ラッピング広告のような役割です。それに派生してポスターなどの販促グッズのデザインも行います。

もう一つが、プリ機の中身に関わるデザインです。操作するタッチパネル画面内の要素や、プリをデコレーションする落書きコンテンツや、プリントされるシール自体のデザインです。

外装デザインは一般的なグラフィックデザイナーの仕事に近く、中身のデザインは雑貨をデザインするような絵心のあるデザイナーの仕事という感じです。

―― プリ機のデザインの面白さについて教えてください。

牧野: 一般的なデザインの仕事は、経験やスキルによってできる仕事が違いますが、プリ機のデザインで大事なのは作りたいイメージをしっかりと持っていることです。そのため、デザイナーとしてのスキルがまだ浅かったとしても、ターゲットユーザーに近い感性を持つことができれば同じ土俵に立てますし、意見も取り入れられやすいです。かわいいことやクリエイティブなことが好きな方にとっては、楽しい仕事だと思います。

飯尾: プリ機のターゲットユーザーは若年層の女性なので、経験が少なくても年齢層が近ければユーザーの心境を理解しやすく、トレンドへのアンテナが高ければスキル不足は補完できることが多いです。若手でも企画のコアに関わることができたり、メインのデザインを担当できるといったように、チャレンジできる機会は多いと思います。

牧野自身がまさにそうですが、「かわいさで感動をお届けしたい」という想いをもった人が活躍できる職場です。

―― 牧野さんは長くプリ機の特に外装のデザインリードを担当されてきた中で、デザイナーとしてのご自身の変化は感じていらっしゃいますか。

牧野: プリ機の外装デザインは、一般的な広告のように文字などで強くメッセージなどを伝えることは少ない、世界観を大切にした独特なデザインです。

プリ機はデザイナーが主導ですべてを決めるわけではなく、企画やハードウエアエンジニア・ソフトウエアエンジニアなど、さまざまな職種の人とプロジェクトを進めていきます。そのため、関わるさまざまな職種の人の想いを取り込みながら、具現化していくスキルが身についたように思います。

デザイン指針によって、デザイナーのクリエイティビティはさらに広がる

―― デザイン組織において、デザイナーにはどのようなキャリアパスや成長の機会が用意されていますか。

飯尾: 以前はプリ機事業に携わるデザイナーは、プリ機のデザインを行うチームと専用アプリのUIデザインを行うチームに分かれていました。しかし今年2025年の春から同じ部署に統合され、私が副部長として部長と協力しながらマネジメントをしています。

プリ機のデザインは「かわいい」を極めるプロセスが圧倒的に素晴らしく、アプリのデザインはアジャイル開発のような最先端のプロセスを取り入れています。今後はリアルプロダクトとソフトウエア双方のデザインプロセスの良い部分をミックスしていきたいと思っています。

―― UIデザイナーもいらっしゃるんですね。デザイン領域をこえたキャリアパスもあるのでしょうか。

飯尾: 同じ部門になったことで、今後さらにデザイナーのキャリアパスも広げていきたいです。プリ機のデザインと、アプリのUIデザインはまったく違う観点のデザインなので、互いのデザインを混ぜていくことでアップデートしていくのではないかと思っています。

今後、表層的なデザインはより多様化されて効率化が進み、コモディティ化されていくと思っています。そうなったときに残るものは自分たちの哲学をもったクリエイティブです。そこで、まずはフリューのプリデザインとしての指針を作る取り組みを始めています。

―― デザイン指針とは、どのようなものなのでしょうか。

飯尾: 感性的な領域における情緒的価値と、機能的な領域における機能的価値は、切り分けて考える必要があると考えています。UI/UXのアプリデザインチームでは、ここ2年ほどデザインシステムを作り、デザインの一貫性にこだわる取り組みを行っています。

当初はルールがクリエイターの可能性を縛るのではないかという懸念もあったのですが、結果的にはルールを作ったことで自由に発想できる領域のクリエイティブにかけられる時間が増えました。

―― ルール化する領域と、自由度の高い領域はどのように線引きされたのでしょうか。

飯尾: 複数のアプリでも、ユーザーに届けたい体験として一貫している部分を特定して、その部分のルールを定めました。逆にそれ以外はもっとクリエイティビティを出していこうと決めたことで、デザイナーが楽しそうにデザインするようになりました。

現在、プリ機のデザインは機種ごとにゼロからデザインしているので、操作性の部分ではユーザーに学習コストがかかっている面もあります。ルール化する部分は決めた上で、デザイナーがもっと自由にクリエイティビティを発揮できるようにしたいと思っています。そして、プリが「誰とでも楽しめる日常のエンタメ」としてより多くの方から愛され続けるよう、さらにはフリューの企業理念である「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」を実現できるよう、これからもチームワークを大事にしながらチャレンジしていきたいです。

インタビュー
執筆久保佳那

東京生まれ。新卒でNECシステム建設(現・NECネッツエスアイ)で法人営業を経験後、転職サイトtypeの求人広告制作、マーケティングを経験。株式会社ウェブライダーでオウンドメディア企画、ライティングを経験。2017年7月より独立し、経営者や管理職のインタビュー、書籍のライティングなどを行う。

https://note.com/kubokana/n/n0d153fa434f7

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