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次のデザイントレンドは『ソーラーパンク』? FigmaのCEOも注目する明るい未来像

最終更新日:2024.10.31編集部
次のデザイントレンドは『ソーラーパンク』? FigmaのCEOも注目する明るい未来像

先日、人気ポッドキャストシリーズDecoderに出演したFigmaのCEO、Dylan Field氏が「ソーラーパンク」と呼ばれるコンセプトに言及しました。この聞きなれないソーラーパンクというコンセプトが今後デザイン表現のトレンドになるかもしれません。

このポッドキャストの中で、彼は最近のデザイン表現がネオンやポリゴンといったサイバーパンクの機械的な表現から、より人間的な表現にシフトしていると述べています。これを彼は「ソーラーパンク」と呼び、彼自身の未来に対する楽観的な考えに合ったコンセプトとして紹介しています。(ソーラーパンクに関する話は44:19あたりから)

このポッドキャストのエピソードを聴いてみる!

ソーラーパンクとは?テクノロジーによる退廃ではなく、持続可能な世界の表現

Pinterestでの「Solarpunk」の検索結果

「Solarpunk」の検索結果(Pinterest)

このソーラーパンクがどのようなものなのか、Pinterestで「Solarpunk」と検索した結果を見るとイメージが湧くのではないでしょうか?

ソーラーパンクを一言で表すと、「テクノロジーと環境の共存が成り立ち、持続可能な文明が実現した世界の探究」です。持続可能なエネルギーへのシフトや、高度なテクノロジーによる農業の発展などを通して、テクノロジーよる世界の退廃を描くサイバーパンクとは相対する世界線を描きます。

「Cyberpunk」の検索結果

「Cyberpunk」の検索結果(Pinterest)

AIを始めとしたテクノロジーの急速な発展やコロナ禍における退廃的な空気感の中、ここ数年はビジュアルデザインの表現としてサイバーパンク的なネオンやダークな表現がトレンドとなっていました。サイバーパンクへの注目度は、映画やゲーム作品を見ても顕著です。

『攻殻機動隊』を原作としたハリウッド映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の公開や、ポーランドのゲーム開発会社CD PROJEKT REDが手がけた『Cyberpunk 2077』のリリースなど、2015年ごろから人々がサイバーパンクの世界観に触れる機会も多かったでしょう。

その結果、自然と多くのデザイナーが「未来感」の表現としてネオンやエッジの効いたタイポグラフィといったデザイン要素を取り入れていったのではないでしょうか?

一方、ソーラーパンクの映像表現としては、ロンドンのアニメーションスタジオ『THE LINE』が手がけたギリシャヨーグルトの広告が有名です。どちらも未来の描写でありながら、サイバーパンクとソーラーパンクでは対照的な世界が描かれています。

また、グラフィックデザインにおけるサイバーパンクの表現もここ数年の間は、2021年のデザイントレンドとしてAdobeが定義したヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴや2023年のサイキックウェーブなど、サイバーパンクの世界観を踏襲しながらも明るく楽感的な表現が登場していました。

これらのスタイルは、ノスタルジックな過去や精神世界といった、非現実に明るさの表現を求めたものということもできるかもしれません。この変化を経て、改めて自然環境との共生といった現実世界での明るい未来に想いを馳せるソーラーパンクが注目を集めるというのは自然な流れとなるのではないでしょうか?

デジタルデザインにおけるソーラーパンクの表現

冒頭で紹介したポッドキャストでは、テスラの「Cybertruck」とEV車メーカーリヴィアンの「R3」の対照的なデザインについてのコメントで、「R3」がソーラーパンク的なデザインの例として言及されていましたが、このソーラーパンク的なデザイン表現はWebデザインを始めとしたデジタル環境でも増えていく予感がします。

https://rivian.com/r3

リヴィアンの「R3」 曲線的で自然環境と調和するようなデザイン(https://rivian.com/r3 )

「環境との調和 x 未来感」をソーラーパンク的なデザイン表現のキーワードとして考えるのであれば、約半年前のWiseのリブランディングもこのトレンドをいち早く捉えたものであったのかもしれません。

このリブランディングで刷新されたWiseのブランドデザインでは、次世代の金融サービスとして未来感を表現しながらも「人間味」を強く打ち出しており、自然を多く含んだ写真表現にも違和感なく調査する中間色トーンの表現が用いられています。

新しいWebサイトのデザインからは、テクノロジーと環境の共生といった明るい未来が感じられるのではないでしょうか?

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https://wise.com/community/en/brand-new-look

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https://wise.com/

逆にWiseがサイバーパンク的な表現を取り入れていたとしたら、消費者が受け取るメッセージも大きく異なるものとなったと思います。このような優しさや有機物を彷彿とさせるような表現は、最近になってデジタルデザインの表現としても増えてきているように思います。

いつの時代もある種の「未来感」がデザインに取り入れられる

今でも多くのブランドが使用する書体「Futura」もモダニズム運動の中で、「未来」を表現する書体として登場しました。近年のサイバーパンクも一種の未来感の表現といっても良いでしょう。

kubrick-space-odyssey-futura-1

https://eyeondesign.aiga.org/happy-90th-birthday-to-futura-the-modernist-typeface-that-is-literally-everywhere/

これらの未来感を表現するデザインでは機能性や普遍性、そして機械的な正確性などが取り入れられており、優しい色合いや人間的な曲線は「未来」の表現としては積極的に取り入れられてこなかった印象があります。一方のソーラーパンクは未来感と人間味、そして自然環境を感じさせる要素をデザインに同居させる点で目新しさがあります。

DribbbleやBehanceで「Solarpunk」と検索しても分かる通り、現時点ではまだ「ソーラーパンク」という言葉がWebデザインやブランドデザインの文脈で使われるケースはほぼないようですが、今後大きなトレンドとなっていく可能性は大いにあると感じます。

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ソーラーパンク

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