
Optimaとは?碑文からデザインされたヒューマニスト・サンセリフ体
Optima(オプティマ)は、ドイツの書体デザイナーHermann Zapf(ヘルマン・ツァップ)によってデザインされ、1958年にリリースされた欧文書体です。ヒューマニスト・サンセリフ体に分類されますが、一般的な”サンセリフ体”とは少し違うイメージを持った人も多いのではないでしょうか。縦線と横線の太さのコントラストや、セリフを示唆するようなエレメントが残っているため、サンセリフ体なのにセリフ体のようなエレガントさがあるのが、Optimaの特徴と言えます。
この特徴はどこから来ているのか、Optimaの成り立ちを知ると理由がわかります。ツァップはイタリアを旅した際にフィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂で、ルネッサンス時代に彫られた碑文を見かけました。そのデザイン、特に独特なストロークに興味を持ち、すぐに持っていた紙幣にスケッチしました。それから10年間その書体のデザインに取り組み、それがOptimaになったのです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Optima
最初のスケッチ https://web.archive.org/web/20150928213844/http://typographics.com/projects/zapf/
同様の起源を持つ『Trajan』とのイメージの比較
Optimaと同じく碑文をベースにしている書体と言えば、1989年にCarol Twombly(キャロル・トゥオンブリー)がAdobeのためにデザインしたセリフ体、Trajan(トレイジャン)が有名です。格式あるイメージから、ロゴはもちろん、本の表紙や映画のタイトルなどでもよく使われている定番の欧文書体です。基になっているとされる碑文はなんと2000年前のものと言われ、誕生の起源を辿るととても歴史のある書体であることがわかります。
Optimaとデザインを比べてみると、Trajanはより高級でかっちりとした印象があり、 そういったイメージを出したいタイトルなど惹きつける場所で使用するとカッコよくきまりそうです。一方でOptimaは、曲線的な優美さがあることから、特に女性向けのデザインと相性が良さそうです。さらに、エレメントがシンプルなことでよりモダンな印象があり、色々なシーンで使えそうな想像ができませんか?実際に、ツァップがOptimaをデザインした際には汎用性を重視していたようで、その意図により個性的であるのに読みやすい文字であることと、バリエーションも徐々に拡張されたファミリー書体となっています。
デザイン性と視認性に優れるOptimaは色々な場所で発見できる
Optimaは、ブランドのロゴのベースとしてよく使用されていることで知られています。特に、コスメブランドの大手であるアメリカのESTEE LAUDERをはじめ、ファッション・美容業界ではOptimaをベースにしているであろうブランドロゴや商品ロゴが多くあります。
Optimaの美が見事に活かされているAesopのブランドアイデンティティ
https://www.aesop.com/jp/
オーストラリア・メルボルン発のコスメブランドAesopのロゴは、Optimaを使用しています。地域によって店舗デザインが異なるという、コスメブランドでは珍しい特徴を持ったAesopですが、商品パッケージなどグラフィックで見られるデザインは、潔いぐらい統一された機能性を重視しているように思います。商品パッケージのロゴ以外のテキスト部分ではNeue Helveticaが使われているようですが、OptimaとHelveticaといえば、機能性を重視するモダニズムの同じ時代に生まれたフォントです。この2つの書体をメインとしたタイポグラフィが印象的な商品は、品質の信頼感や普遍的な美というのが強調されているのではないでしょうか。様々なマテリアルが採用される流動的な店舗デザインと、Optimaのロゴを含む商品から感じられる普遍的なデザインが相関して、洗練されたブランドアイデンティティ を作っているのではと思います。