
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?

UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略称で、「利用者がサービスや製品を通して得られる顧客体験」を意味します。個々の顧客に対して、直接サービスを提供する企業が「顧客体験」といった言葉を使う一方、個々の利用者を「ユーザー」と定義した上で、ソフトウェアを通して自動化されたサービス提供を行うIT業界で主に使われている言葉です。
UXとCX(顧客体験)の違い。UXという言葉の2つの使われ方

でもUXという言葉、イマイチわかりにくくないですか?
実際にIT業界で仕事をしていると、
「アプリ全体のUXを改善したい」
「スクロール時のUXが悪い」
「リピート顧客のUXを改善したい」
など、幅広い文脈でUXという言葉を聞きますよね。それぞれ意味が少しづつ違うため、混乱しそうです。
これは、「従来、CXと呼ばれていたもの対してもUXという言葉が使われ始めている」と考えるとわかりやすいです。幅広く使われているUXという言葉の定義について、CX(顧客体験)とUX(ユーザー体験)の関係性を意識するとスッキリ理解できると思います。
CX(顧客体験)とは?ITサービスではUXとの境界線が曖昧に

CX(顧客体験)とは、商品を購入する前から、購入した後までのすべての体験を意味します。
例えば、新型のiPhoneを購入する顧客のCXを考えてみましょう。
テレビで新型iPhoneの広告を見て、利用シーンをイメージする
Appleストアに行って、未来感のある店舗の空間デザインを体験する
丁寧な店舗スタッフの説明を受けてiPhoneを購入
家に帰って購入したiPhoneの箱を開封する
iPhoneを利用する
使い方についてカスタマーサポートに助けを求める
購入したiPhoneについてInstagramにストーリーを公開する
これら全てを含めてCXと呼びます。
顧客の体験すべてを意味するので、IT業界以外でも広く使われる言葉です。
本来、UXはサービスを「利用」しているときの体験のことを意味するので、UXは顧客体験全体としてのCXの一部として考えることができます。しかしながら、IT業界では顧客のことを「ユーザー」と呼ぶことが一般的となったため、今までCX(全体的な顧客体験)と呼ばれていたようなものに対しても、UXという言葉が使われることが多くなりました。
ちなみに、顧客のことを「ユーザー」と呼ぶのはIT業界と違法ドラッグ産業だけなんて話もあります。
UIとUXの違い。UI/UXデザインって?
UXと一緒によく聞く言葉にUI(ユーザーインターフェース)があります。UIとはボタンやスイッチなど、ユーザーとの「接点」のことを意味する言葉で、サービス利用体験であるUXを最適化する上で とても重要な要素となります。
UI(ユーザーインターフェース)とは?Instagramアプリをもとに解説

UIとは、ユーザーと製品とのすべての「接点」のことです。接点と言うとわかりにくいですが、ユーザーはサービス利用時に大きく分けて「インプット」と「アウトプット」という2つの動作をおこなっています。このインプットとアウトプットを行う接点となるのがUIです。ユーザーはアプリなどのサービスを利用する際には、このインプットとアウトプットの繰り返し(インタラクション)を行っているのです。
例えば、インスタグラムのフィードを見ている場面を考えてみましょう。
画面一番上に表示されている投稿の画像を見る
画面をスクロールするとさらに投稿があることに気付く
画面をスクロールする
気になる投稿を見つける
気になった投稿をタップする
この一連の動作でユーザーが見た画像や説明文、ボタンなどのすべてがUIです。
インスタグラムのようなモバイルアプリは、ユーザーが「操作」することを前提としたサービスなので、画面内のすべての要素がUIであるということができます。そのため、アプリをデザインするデザイナーは一般的に「UIデザイナー」と呼ばれています。一方、広告デザインやデジタルアートなどのユーザーが「操作」しないものはUIとは呼ばれません。
IT業界では、UIをどのようにデザインするかが製品のUXに大きな影響を与えるため、デザイナーはUIをデザインする際にUXを常に意識する必要があります。このようにUIとUXが密接に関 係しているIT業界では、アプリのデザインをする際にUI/UXデザインとしてまとめて語られることが多いです。そのため、IT業界の求人情報を見ても、「UIデザインを通して、最適化されたUXを提供するデザイナー」という意味合いで、UI/UXデザイナーとしてデザイナーを募集していることが多いです。
UXデザイナーが解説!UXデザインのプロセスとUX最適化のポイント
個々のUIデザインがUXに大きな影響を与えることはわかりましたが、一体UXが良い製品とはどのように作られるのでしょうか?アプリやWebサイトのUXを改善することを主な職務としているUXデザイナーの実際の作業プロセスを紹介しながらUX最適化のポイントを解説します。
UXデザインの5つのプロセス
UXデザインに求められるのは、「何かを作ること」ではなく「課題を解決すること」です。そのため、具体的な課題解決の方法だけではなく、そのプロセスも非常に重要となります。UXデザインは問題の発見、解決案の模索、解決案のテストの小さな繰り返しとなるため、UXデザイナーはデザイン思考のプロセスでUX課題に取り組むことが多いです。

デザイン思考のプロセス
共感
問題定義
創造
プロトタイプ
テスト
1. 共感

UX最適化の第一歩として、まずはそのサービスや商品を使う「ユーザー」について理解し、共感することが重要となります。ユーザーのサービス利用シーンを洗い出し、どの部分に課題を感じているか仮説を立ててみましょう。
また、よく「ユーザーの気持ちになって考えるべき」と言われることも多いですが、自分がターゲットペルソナに当てはならない場合は、想像に任せるのではなく、ユーザーインタビューやアンケートで実際のユーザーの声を聞くことが重要となります。
2. 問題定義

共感ステップで集めた情報をもとに、解決するべき問題を定義します。ここで定義する問題は、「私たちは、どうすれば〜できるか?」と簡潔にまとめることで、その後のステップで目的を見失うことがなくなり、チームメンバーとゴールの認識を共有する上でも役立ちます。この問題定義の問いのことを、海外では「How Might We Question」と呼び、多くのUXデザインチームで取り入れられています。
3. 創造
