
AISASとは?

AISAS(アイサス)とは、株式会社電通が2004年に提唱(翌2005年6月には商標登録)した、消費者の行動モデルです。AISASは、インターネットが普及し始めた時代の、消費者行動に合わせた形で生まれました。このモデルは、商品やサービスに対する消費者の注意を引くところから、購買後の情報共有に至る心理的なステップを5つに分けて示しています。
Attention(注意)
Interest(関心)
Search(検索)
Action(購買)
Share(情報共有)
上記の順で進行する考え方で、それぞれの頭文字をとって「AISAS」と命名されています。
AISASを理解することで、マーケティング担当者やビジネスオーナーは、消費者の購買行動をより深く把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることが可能となります。
Attention:注意

「Attention=注意」とは、消費者が商品やサービスに初めて触れる瞬間を指します。たとえば、SNSやニュース、広告などのメディアを通じて、新しい商品やサービスを知ることが挙げられます。
Webの検索結果画面
Web広告
SNSのタイムラインで流れてくる情報
情報に触れるシーンは、主に上記のようなシーンが想定されます。
情報量が膨大にある現代では、消費者の注意を引きつける ことは容易ではありません。企業やブランドは、独自性や魅力を持ったコンテンツを提供することで、次のステップとなる消費者の興味関心を引き寄せる必要があります。とくに、デジタルマーケティングの領域では、ユーザーに合わせたフォーマットを、適切なタイミングで提供することが求められます。
そのため、「注意」の段階で重要なことは、単に情報を発信するだけでなく、ターゲットの中でもできる限り多くの方の目に触れる工夫をすることです。
Interest:関心

注意の段階を経て、消費者が商品やサービスに興味を持ち始める段階が「Interest=関心」です。消費者が具体的な情報を求め、詳細を知りたいと感じるようになっている段階であると言えます。
この段階では、注意を引くだけでなく「自分にとって関係があるかもしれない」と思わせるような、記憶に残るコンテンツが必要です。インパクトのあるキャッチコピーや画像・動画など、消費者の関心を寄せるために工夫を凝らした情報提供が求められます。また、商品やサービスの具体的な情報や魅力的な特徴、他商品との違いなどを明確に伝えることで、関心をより高められます。またこのとき、過大表現をもちいた広告などを使用してしまうと、先のステップにある「情報共有」の段階で、事実相違であると発信されてしまう可能性があるため、提供情報が正確であるかどうかにも注意が必要です。
ここの関心度合いが強ければ、次のステップである検索行動につながります。
Search:検索

消費者が商品やサービスに関心を持った後 、具体的な情報を求めて行動を起こすのが「Search=検索」の段階です。この段階では、消費者はさまざまな手段を通じて情報を調査します。
検索エンジンで表示されるWebページ
SNSのタイムラインに流れる投稿
YouTubeなどの動画コンテンツ
商品のレビューサイト情報
販売ページの口コミ
関連する書籍
消費者は、販売する会社が提供する情報だけではなく、上記例のように幅広い範囲から、検討する商品の詳細や他者の評価を確認します。
情報を提供する企業は、多様な窓口からのアクションに対応できるような施策が必要です。たとえば検索エンジン経由であれば、SEO(検索エンジン最適化)の取り組みを通じて、消費者が情報を検索した際に上位表示されることも重要です。また、SNSアカウントを作成し、商品のプロモーションを継続的に発信することも大切な取組みになります。
Action:購買

消費者が注意→関心→検索のステップを経て、商品を手にしたい・購入したいという心理へ進んだ段階が「Action=購買」です。この段階は、消費者が商品やサービスの価値を認識し、それに対する投資が正当であると判断する状態を意味します。
消費者の購買意欲を決定づけるためには、明確なクロージングコンテンツ(契約意思を決定づける訴求)も大切です。
期間限定価格での提供
割引キャンペーンの実施
おまけ商品の付帯
また、重要事項やプライバシーポリシーページが設置されているかなど、安心して購入できるかの印象に関わる部分も購入意思を決定づける大切な要素です。さらに、購入後にアフターサポートなどのサービスがあることも、消費者の購買意欲を高める要因となります。
Share:情報共有

「Share=情報共有」とは、購買後(サービス使用後)、消費者がその情報を他者と共有する段階です。
販売サイトでの口コミ
SNSの投稿
ブログサイトでの投稿
口頭での共有
情報共有は、上記例のようにさまざまな方法でおこなわれ、共有される情報は「Search=検索」の段階でも活用されます。そのため、情報共有をしてもらう仕組みを作るために、シェアしやすいようWebサイト内にSNSボタンを設置するなどの工夫や、シェアしてくれた顧客への特典付帯などの施策を実施することも大切です。
インターネットが普及した現代では、購入前に他者の評価や体験談を参考にする傾向が強くなったため、この情報共有は非常に重要な役割を果たします。とくにSNSの普及により、一つの情報が瞬時に多くの人々に広がることが可能となりました。
企業やブランドにとっては、この段階でのポジティブな情報共有は、新たな消費者の獲得やブランドイメージの向上につながります。逆に、ネガティブな情報が共有されることの影響も大きくなるため、質の高い商品やサービスの提供、そしてアフターサポートの充実が求められます。
AISASとAIDMAの違い

AISASと似た用語として「AIDMA(アイドマ)」があります。AIDMAも消費者の購買行動を示すモデルの一つで、商品やサービスに対する消費者の認知から購入に至るまでの心理ステップを意味しており、以下工程の頭文字からとって命名されています。
Attention(認知)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)
1920年代のアメリカにて提唱されたモデルで、古くからマーケティング基礎のひとつとされてきました。
AISASにある検索行動や購入後の情報共有がないことからわかる通り、AISASと比較し受動的な心理ステップであるとも言えます。そのため、消費者がじっくりと検討・検索などをする必要性が少なく、衝動的に購入できる商材にはAIDMAが適していると言えます。
逆に、家具・家電・住宅などの高価格商品や、クリニックや塾など継続的な支払いが必要なサービスなど、購入前にじっくりと検討を重ねるような商材においてはAISASを用いたマーケティング戦略が効果的です。
AIDMAからAISASへと変化した時代背景
AIDMAは、テレビやラジオ、新聞などのマスメディアが主流だった時代の消費者購買行動モデルを示すものでした。しかし、2000年代に入ると、インターネットの普及が進み、消費者の情報収集や購買行動が大きく変わります。消費者は自ら積極的に情報を検索し、その情報をもとに購買判断を下す傾向が強まったことで、受動的ではなく能動的に情報を取得する心理モデルであるAISASの考え方が浸透しました。
このように、AIDMAからAISASへの移行は、インターネットを主とするデジタル技術の発展における影響が大きいと言えます。消費者と企業の関わり方が根本的に変わって いった時代背景に合わせて、マーケティング戦略も変化していくことを理解しておきましょう。