Nielsen Norman Groupが、AI時代のUXが直面する新しい局面を「後始末の時代(The Custodial Era of UX)」と名づけた記事を公開した。AIによって設計やプロトタイプ、機能の生産は一気に速くなったが、その良し悪しを見極めるUXの評価が追いつかない。結果として、検証されないまま出荷された成果物の「後始末」をUXが引き受けることになる、という問題提起である。
記事が指摘する核心は、生産が評価よりも安くなったという逆転だ。AIを使えば午後のうちに5つのワークフロー案を作れてしまうが、そのどれが本当にユーザーの役に立つのかを判断するには、ユーザーのニーズやメンタルモデル、アクセシビリティ、組織の文脈への深い理解が要る。生産のコストだけが崩落したことで、「技術的には動くがユーザーを混乱させる機能」「どこかぎこちないAI生成のコピー」「不要な複雑さで肥大化したプロダクト」が 量産されやすくなっている。
この構造は5段階のサイクルとして描かれる。新しいアイデアが生まれ、AIで一気に作られ、UX評価が後手に回り、ユーザー体験上の問題が表面化し、最後にUXが後始末に追われる——という繰り返しだ。速く出荷することと、役に立つものを作ることは同じではない、というのが著者の一貫した主張である。
では現場はどう応じるべきか。記事は3つの方針を挙げる。第一に「何を作るか」についての共通の判断軸を築くこと。AI生成の機能をすぐ磨き込むのではなく、まず「これは本当のユーザー課題を解くのか」「メンタルモデルに合うのか」と選別し、誰も必要としない機能には押し返す。そしてその判断理由をチームに説明し、組織全体のUXリテラシーを育てる。
第二に、評価そのものを高速化すること。リスクの低い機能は軽いテストで済ませ、重要なワークフローには相応の厳密さを割り当てる。すばやくテストできるユーザーパネルのような基盤を整え、AIは調査の段取りや分析といった機構的な部分を助ける道具として使い、人間の判断は置き換えない。第三に、生成の段階にUXを組み込むこと。デザイン原則やデザインシステムの基準、アクセシビリティやコンテンツの要件、欺瞞的なパターンを避けるためのガイドラインをUXコンテキストとしてAIツールに埋め込み、予測できる問題があらかじめ起きないようにする。UXの役割は「デザインを作る人 」から「ユーザーのニーズの守り手」へと重心を移していく、と記事は結んでいる。









