
フレーミング効果とは?

フレーミング効果とは、同じ情報であっても表現の仕方が違うと、その情報にもとづいた受け手の意思決定内容が変わるといった認知バイアスのことです。損失を避けたいという心理的な傾向により、フレーミング効果の認知バイアスが働きます。B J McNeil氏らが行った以下の研究を具体例としてあげてみましょう。
被験者には、自分が肺がんにかかっていると想像してもらい、治療に「手術」と「放射線治療」のどちらかを選択してもらうという実験です。実験では、被験者を2つのグループに分け、それぞれのグループに「手術をした場合の情報」を下記のように異なる表現で説明しました。
A:術後1ヶ月の死亡率は10%です
B:術後1ヶ月の生存率は90%です
研究の結果、死亡率の情報にフォーカスしたAを提示されたグループよりも、生存率の情報にフォーカスしたBを提示されたグループのほうが「手術」を選択する割合が高くなったとのことです。以上のように同じ情報であっても、ちょっとした表現の違いで人の意思決定が変わる認知バイアスをフレーミング効果と言います。
フレーミング効果の提唱者
フレーミング効果は、1986年にアメリカの行動学者「ダニエル・カーネマン」と、イスラエルの出身である心理学者「エイモス・トベルスキー」により提唱されました。
なぜフレーミング効果は起きるのか?プロスペクト理論とは?

フレーミング効果が起きる要因は、プロスペクト理論で説明されています。
プロスペクト理論とは、利益が出ているときはリスクを回避したい傾向にあり、損失が出ているときはリスク志向になるという、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提案した理論です。
例えば、以下の質問があったら、あなたはどちらを選びますか?
A:確実に10日間の休暇を取得できます。
B:コインを投げて表だったら、20日間の休暇を取得できます。ただし、裏だったら、休暇は0日間です。
おそらく、Aを選ぶ方が多いのではないでしょうか?人がこのような選択を行う際には、リスクを回避して確実に利益を得たいという心理が働きます。
では、以下の質問はどうでしょう。
急な出費に より15万円の借金を抱えてしまいました。以下の2つの選択から、どちらを選びますか?
A:確実に借金を10万円まで減額します。
B:コインを投げて表だったら、借金が完全に免除されます。ただし、裏だったら、借金は15万円のままです。
この質問では、Bを選んだ方が多いのではないでしょうか。自分にすでに損失が出ているため、リスク志向であるBを選ぶ人が多くなるというわけです。
上記のように、プロスペクト理論で説明されている「損失を嫌う人の傾向」がフレーミング効果を引き起こすのです。
心理学における3つのフレーミング効果

フレーミング効果には、主に3つの種類があります。
利益確定型
損失確定回避型
ゴルディロックス型
それぞれの種類を説明します。
利益確定型
利益確定型とは、リスクがある場面で利益を確保したいという心理状態を指します。フレーミング効果の研究者であるダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1981年に行った、実験での例を挙げてみましょう。
600人が死ぬと言われているアジア病が発生しました。この病気を治療するための方法が2つあります。どちらを選びますか?
治療法A:200人の命が確実に助かるが、400人は死ぬ
治療法B:1/3の確率で600人が助かるが、2/3の確率で誰も助からない
結果、治療法Aが72%の人に選ばれました。
治療法Aの「確実に助かる」という文言がポイントとなって、Aを選ぶ人が多くなっています。この実験のように、人はリスクがある場面で決断を迫られると、利益を確保したいという心理状態になるのが利益確定型のフレーミング効果です。
損失確定回避型
損失確定回避型とは、損失が決まってしまう行動を避ける心理傾向を指します。前述した実験では、以下のように伝え方を変えて再度調査を行っています。
600人が死ぬと言われているアジア病が発生しました。この病気を治療するための方法が2つあります。どちらを選びますか?
治療法A:400人は確実に死ぬが、200人は助かる
治療法B:600人全員が死なない確率は1/3だが、死ぬ確率は2/3
結果、治療法Bが78%の人に選ばれました。
上記のように、本質は同じにも関わらず、ちょっとした表現の違いで人の行動が全く変わることが分かります。
ゴルディロックス型
ゴルディロックス型とは、選択肢が3段階あると人は真ん中のものを選びやすいという心理効果のことです。例えば、以下のように3つのパンがあったら、どれを選びますか?
おそらく、真ん中の「食パン」を選んだ方が多いと思います。しかし、下記のようになるとどうでしょう。
「プチリッチ食パン」を選んだ方が多いのではないでしょうか。以上のように、真ん中にあるものを選びやすい効果をゴルディロックス型といいます。