
ユーザーインタビューとは?ユーザー行動の「なぜ」に迫るUXデザイン手法

ユーザーインタビューとは、プロダクトやサービスのユーザーとの対話を通して、その課題やニーズ、現状のプロダクトへの反応などを分析する手法です。ユーザーインタビューは、定性分析の手法の一つであり、行動データの分析などの定量分析と比べて、ユーザー行動の「なぜ」に迫ることができるという強みがあります。
デジタルサービスの世界では、データ分析ツールが充実し、簡単にユーザーの行動データを分析することができるようになりました。このような定量データをもとにサービス改善を繰り返していくようなケースも多いでしょう。しかしながら、より広い視点でサービスにとって重要となってくる
ユーザーは、なぜそのサービスを使っているのか?
ユーザーは、サービスのどのような点に魅力を感じているのか?
ユーザーは、サービスのどのような点に不満を感じているのか?
といった情報はデータ分析からは見えてきません。このようなサービスの提供価値に関するユーザーの認知・反応を分析する際には、 ユーザーインタビューが有効な手段となります。
ユーザーインタビューの3分類

ユーザーインタビューにはその特徴から、大きく「構造化インタビュー」「半構造化インタビュー」「非構造化インタビュー」の3種類があります。
構造化インタビュー: アンケートでも代替可能
構造化インタビューとは、すべての質問を前もって準備した上で、一問一答形式でインタビューを進めるインタビュー手法です。この手法のメリットは、定量分析に近い一貫性のあるデータの取り方ができるという点です。集めたデータを集計しやすいため、明確なアウトプットが欲しい場合などに利用されます。
しかし、構造化インタビューでは、ユーザーと対話しながら行うことによるメリットはほとんどほとんど 無いと言えます。一問一答形式となるため、より時間やコストのかからない「アンケート」として行うことが適切な場合は多いでしょう。この、インタビューとアンケートの使い分けについては、「アンケートとインタビューの適切な使い分け: そのユーザーインタビュー、アンケートでも良いのでは?」にて詳しく解説します。
半構造化インタビュー: 回答を深掘りして深層心理に迫る
半構造化インタビューは、質問を前もって準備する点は構造化インタビューと同じですが、インタビュー実施時にインタビューアーが相手の回答や反応をもとに、話を広げて解答の意図や深層心理に迫る手法です。イメージとしては、5回「なぜ?」という質問を繰り返すことで、ものごとの本質に迫れるという「5 Whys(なぜなぜ分析)」に近いです。もちろん、単純にインタビューで「なぜ?」と5回も質問しても鬱陶しいだけなので、ロジカルに状況を分析して即興で質問を行えるインタビューアーのスキルが求められる手法となります。回答を深掘りするためのポイントは、「それぞれの質問で明らかにしたいこと」を前もって明確にしておくことです。詳しくは、後の「ユーザーインタビューの準備: 聞きたい質問をリストアップするのではダメ?」にて解説します。
非構造化インタビュー: 実施環境を工夫すると効果的
非構造化インタビューとは、質問を事前に準備せずにテーマのみを決めてユーザーと自由に対話をするインタビュー手法です。まだサービスの明確なコンセプトや方向性が決まっていない場合や、新たな課題を発見して新機能を提供したい場合などに有効となります。非構造化インタビューを行う場合には、テーマに沿った場所や環境でインタビューできると効果的です。例えば、「料理を行うときの悩み」を聞く場合は、実際に普段利用しているキッチンにて料理をしてもらいながらインタビューを進めるなどです。ユーザーは、自分の抱える課題についてあまり強く意識していない場合も多いです。そのため、課題の起こる環境に実際に身を置くことで、会議室などのインタビューの場では思い出せないような点についても発言してもらえる可能性が高まります。
「なぜ」を明らかにできることがユーザーインタビューの利点

効果的なインタビューを行うために、改めてユーザーインタビューの利点について述べておきたいと思います。なぜなら、この利点を最大限に活かせるかどうかがユーザーインタビューのポイントとなるからです。ユーザーインタビューの最大の利点は、「なぜ?」に迫れることです。これは、サービスの改善にとってとても重要な情報でありながら、なかなか他の手法では得ることのできない情報です。例えば、Instagramのアプリ1つを見ても、サービスが提供している価値はさまざまです。
写真を投稿すること
フォロワーが増えること
他の人の投稿を見ること
他の人と交流すること
などのInstagramが提供する価値の中で、どの提供価値に魅力を感じている人が何%くらいいるのかといったデータについては定量的なデータの分析だけではなかなか見えてきません。また、「他の人と交流すること」 に魅力を感じる人が多いとわかった場合にも、その背景として「なぜInstagram上での交流が魅力的なのか?」といった情報を得るためには直接ユーザーに聞く以外に良い方法はあまりありません。このような、ユーザーの体験を根本的な動機から理解することができると、デザインやUX改善のための大きな手がかりとなります。