
2013年10月にサービスを開始し、1,600万ダウンロードを突破しているZOZOのファッションコーディネートアプリ「WEAR」。2024年5月にはファッションに特化したAIを活用してリニューアル、「好みのジャンル傾向」がわかるファッションジャンル診断や画面上でさまざまなメイクを試せる「WEARお試しメイク」などを新たに提供開始している。
インフルエンサーをはじめ、一般ユーザーもファッションコーディネートやメイク画像を投稿でき、能動的に楽しめるコンテンツが充実している。本記事では、リニューアルしたWEARを筆者が試しながら体験設計の工夫やテクノロジーの精度を紹介したい。
パーソナライズされた提案で「もっと見たい」を促進
WEARをダウンロードすると、まずはズラッとコーディネート写真が表示され、好きなコーディネートを5枚以上選ぶように指示される。

男女別にコーディネート一覧が表示され、好きなものを選ぶ

その後、好みのジャンル傾向が診断される(ZOZO提供)
コーディネート写真を選ぶと、すぐに診断結果が表示される。筆者の場合は「ちょこっとキュートなフェミニン」で、普段の好みと若干のズレを感じた。ZOZOTOWNは10代後半から50代までをターゲットとしているが、ボリュームゾーンは20〜30代であり、コーディネート写真も若年層向けにセレクトされている。筆者の年齢はそれよりも年上になるため、若干感覚のズレが生じたのかもしれない。
このファッションジャンル診断は全144パターンで診断され、12種類のファッションジャンルによって構成されている。なお、診断にはZOZOがリアル店舗で提供する超パーソナルスタイリングサービス「niaulab(似合うラボ) by ZOZO」で得た独自の知見が活かされているという。
診断結果を活かして、WEARに投稿されている1,400万件以上のコーディネート投稿から「好みのジャンル傾向」とジャンル構成が近いコーディネートを検索できる。コーディネートはインフルエンサーだけでなくショップスタッフや一般ユーザーも自由に投稿でき、洗練されたスタイルから親近感が湧くものまでさまざまだ。身長も表記されているので、自分に近い体型の人のコーディネートは参考になりやすいと感じた。
また、コーディネート検索の絞り込み機能では最大3つのジャンルを任意で選択し、選んだジャンルで構成されたコーディネートの検索も可能だ。

診断結果を活かしたパーソナライズな提案(左)に加え、任意で選んだカテゴリからの提案(右)も可能だ

好みのコーディネートを選ぶと使用アイテムが下部に表示され、購入までのUXがスムーズだ
筆者の感覚では、AIの診断による提案よりも任意選択した3つのジャンルで構成したコーディネート検索のほうが、自身の好みにマッチしていた。好みのコーディネートをタップすると使用アイテムが判明し、買物ページに飛ぶこともできる。さらに使用アイテムを使った別のコーディネートが同じページ内に表示されている。
コーディネート検索から購入ページに移行するまでのUXがスムーズで、ファッションに興味を持つ一ユーザーとして利用したところ長時間見ていても飽きなかった。ここから購入にいたる可能性は十分にありそうだ。「好みのジャンル傾向」のグラフは、閲覧したコーディネートをもとに順次変化するほか、任意のタイミングでの再診断も可能になっている。
ファッション・メイクに特化したSNSの役割も
WEARにはパーソナライズされたコーディネート提案を閲覧するだけでなく、投稿やフォロー機能を使って能動的な体験ができる特徴もある。

コーディネート、メイク、ノウハウ動画を投稿でき、反応も得やすい
ユーザーは「ファッションコーディネート」「メイク」「ノウハウ動画」を投稿可能で、総ユーザー数が多いためか投稿に対してリアクションが付きやすい。試しにメイクを投稿したところ、翌日には数名から「いいね」や「お気に入り」のリアクションを得られた。

インフルエンサーとして活躍する「WEARISTA」は、一目でわかるようになっている
SNSのように「フォロー機能」もあり、フォロワー数が表示され影響力が可視化されている。WEAR公認のファッショニスタである「WEARISTA」には、名前の横に「チェックマーク」が表示されており、センスの高いスタイリングやトレンドを取り入れた着こなしで多くのユーザーのお手本となり、業界を盛り上げるインフルエンサーだという。WEARISTAには、高橋愛さん、浅野忠信さんといった著名人やファッションインフルエンサーがいるそうだ。
WEARISTAのメリットとして、「露出の機会がアップする」「ZOZOTOWNで利用可能なポイントが付与される」「ファッションブランドとのコラボレーション機会が得られるチャンスが増える」などがある。
WEARでは、WEARISTAになれる投稿企画「WEARセンバツ」を定期的に開催しており、お題に沿って投稿したユーザーの中からWEARISTAを認定する場合があるそうだ。

ファッション・メイクに特化したSNSとして、ファッションブランドも積極的に活用している印象だ(ZOZO提供)
ファッションやメイクはInstagramやTikTokが特に相性が良いと考えられ、Xでも関連の投稿が反響を呼んでいるのを見かける。一方で、すでに影響力の高いインフルエンサーが多く存在しており、多様な価値観のユーザーが存在するためフォロワー獲得の難しさがあると思われる。
その点、WEARは投稿がファッ ションとメイクに特化されており、すでにその領域に興味関心を持つユーザーが集まっている。この領域で存在感を高めたい人にとっては、優位性があるかもしれない。
いろいろと試したくなる「お試しメイク」機能
続いて、「お試しメイク」も体験してみた。同機能は投稿されているメイク画像と同じメイクを画面上で試すことができるもので、自身が投稿したメイクを他のユーザーに試してもらうことも可能だ。

使用したコスメアイテムをタグ付けして投稿する
メイク投稿では、使用したコスメアイテムをタグ付けして画像・動画投稿が可能で、ZOZOTOWNやZOZOCOSMEで取り扱いのあるアイテムはメイク投稿詳細から購入できる。
お試しメイクがその後の購入にいたるかどうかは、その精度がポイントになるはずだが、筆者の感覚では、ここからコスメを購入したいという意欲にはつながらなかった。特に眉毛が前髪に隠れていると判別が難しいようだ。

写真左のメイクを試したのが右の写真だが、眉毛の違和感が強かった

左側はお試しメイクをしないノーマルの状態。真ん中のメイクを試したのが右の写真で、目の二重幅が変わり別人のような印象に。眉毛の違和感はさらに強くなった
アイシャドウやマスカラ、チーク、リップに関してはメイクを乗せる位置のズレは特段感じられなかったが、目の印象がモデルの顔の印象に引っ張られ、二重幅や目の形が変わってしまっていた。メイクを試すなら自分と顔の印象がかけ離れているモデルは避けたほうが良さそうだ。
