Creative Boomが、デザインエージェンシーRagged Edgeによる、AIノートアプリGranolaのリブランドを取り上げている。会議の記録を担うこのツールの新しいアイデンティティは、生産性アプリにありがちな磨き上げられた完璧さとは正反対の方向へ振り切った。「あえて不完全に、まぎれもなく人間らしく」——それが全体を貫く思想である。
中心にあるのは、手書きのメモを思わせる有機的で自由な形の「G」のロゴだ。共同創業者サム・スティーブンソンの実際の筆跡をもとにした専用のスクリプト書体は、複数の字形バリエーションを持ち、本物のペン書きのように自然に揺らぐ。整いすぎた印象を意図的に避けることで、AIという無機質になりがちな領域に、温度のある人間性を持ち込んでいる。
配色とイラストも同じ方針で選 ばれている。AIブランドにありがちな鮮烈な色ではなく、暖かみのあるアースカラーの緑を基調に据えた。さらに、テクスチャと写真を重ねる新しい「findings」というイラストのスタイルを導入し、ツールが差し出す気づきに質感を与えている。街頭キャンペーンでは「Being present is a power move(その場にいることこそ力の一手)」や、遊び心のある「Granola is not for breakfast(Granolaは朝食用ではない)」といったコピーが躍った。
結果は数字が物語る。ローンチ当日にX(旧Twitter)でトレンド入りし、過去最高のダウンロード数を記録。世界で二番目に急成長したソフトウェアブランドとなり、三か月のうちに15億ドルの評価額で1億2500万ドルの資金調達を実現した。ブランドの刷新が、事業の勢いに直結した好例である。
「プロセスより進歩を」という一貫したメッセージのもと、混沌とした職場に寄り添う存在としてGranolaを位置づけた点も見逃せない。完璧さを競うのではなく、あえて人間の手触りを残す——AIプロダクトが急増するいま、日本のデザイナーやブランド担当者にとっても、差別化の一つの解を示す事例だといえる。









