Nielsen Norman Group(NN/g)のエヴァン・サンウォールが、メンターシップを「若手だけのもの」とする思い込みを退け、キャリアを通じて効く成長の仕組みとして捉え直している。研究によれば、メンティー(教えを受ける側)は昇進が増え、キャリア満足度や報酬が高まり、燃え尽きが減る。メンター制度を持つ組織では、周縁化されがちな層の昇進・定着率が最大24%向上したというデータも紹介される。
メンターシップには二つの機能があるとされる。ひとつはコーチングや保護、機会の提供、挑戦、承認といったキャリア面での支援。もうひとつはロールモデルの提示や共感、相談といった情緒面での支えだ。単なる雑談ではなく、根拠に裏づけられた専門能力開発として位置づけられる。
具体的な進め方も踏み込んでいる。メンターは自分より2 〜3段階上の、業界を理解し、他者を指導した経験のある人が望ましい。直属の上司や、報酬の発生するコーチング、浅い関係を多数抱える相手は避けるべきだという。最初の打診は、相手の仕事のどこに敬意を抱いたかを添えた短いメールで、30分の面談を依頼するのがよいとされる。
メンティーの側にも責任がある。相手の時間を尊重し、助言を実際に行動へ移し、明確な目標を持って臨む。目標や頻度(月一回が推奨)、所要時間(一時間)、連絡手段をすり合わせ、毎回テーマを用意し、メモを取り、具体的な次の一手を持ち帰り、その結果を次回に報告する——この往復が関係を機能させる。
そして、あらゆるメンターシップはいずれ自然に終わる。状況が変われば関係が変わるのは失敗ではなく、健全なことだと筆者は言い添える。生成AIが働き方を揺さぶるいま、デザイナーが経験を血肉に変えていくうえで、人から学ぶ営みの価値を見直させてくれる論考である。









