忘却曲線とは?記憶保持の時間経過が描く曲線

ヒトの脳は経験や情報を保管して記憶する機能をもっています。しかし一度記憶したものを忘れるメカニズムも備えています。短期記憶や中期記憶は一時的に記憶されますが、時間とともに必要のない情報は消えてしまいます。記憶は情報を覚えた直後からわずか1日の間に急激に忘却が進み、その後の忘却はゆるやかに進行するのが特徴です。このような記憶保持の時間経過が描く曲線を、忘却曲線(Forgetting curve)と呼んでいます。忘却とは短期記憶や長期記憶に保持していたつもりの情報を思い出せなくなることで、忘却曲線はその際の「再学習にかかる負担の節約率」を示すものです。
記憶のメカニズム「感覚記憶・短期記憶・中期記憶・長期記憶」

■ 記憶のプロセス
何かを見たり聞いたり体験する
目や耳などの感覚器官から入ってきた外界からの「刺激」を脳が情報として受け取る
神経細胞をつなぐシナプスが脳の中で情報を運ぶ
情報が海馬のワーキングメモリに運ばれて短期記憶として1分ほどとどまる
情報を何度もくり返し復唱するリハーサルを行うことで中期記憶として1時間から最長で1か月間くらいとどまる
中期記憶の中で特に重要な記憶は、長期記憶として長期間定着する
心理学の世界で最初に行われた記憶についての実験研究は、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが自らを実験対象にして行った記憶研究です。時間経過による忘却の度合いの変化を調査するためにランダムにピックアップした無意味な文字の綴りを使い、一度学習した無意味綴りを時間が経過したあとでどの程度効率良く学習できるか検討したのです。
エビングハウスによる記憶実験
