しばしば曖昧に語られる「プロダクトセンス」を、Nielsen Norman Group(NN/g)のタナー・コーラーが明快に定義し直している。共感力やクリエイティビティといった抽象的な言葉で片づけるのではなく、測定可能な意思決定の技術として捉えるのが特徴だ。
筆者による定義はこうだ。「プロダクトセンスとは、いま直面している課題が過去の成功や失敗と一致することを見抜き、似た解決策が望む成果にどう影響するかを確実に見積もる能力である」。センスの正体は、生まれ持った才能ではなく、経験を通じて蓄積されたパターン認識にあるという見立てである。
ではどう鍛えるのか。鍵は、実験のループを最後までやり切ることだ。課題を理解し、解決策を選び、成果を測定し、結果を振り返る——この四つを一巡させる。プロダクト の分解記事や市場分析、レビューをいくら消費しても、ループを閉じて実際の結果を観察しなければセンスは育たないと釘を刺す。
さらに重要なのが、パターンが「いつ通用するか」を見極める力だ。筆者は状況を三つに分ける。過去のパターンが素直に当てはまる「高確度の状況」、環境が大きく異なり追加の証拠を要する「低確度の状況」、そして過去の成功に似ているのに別の解を必要とする「厄介な状況(wicked)」。最後の類型こそが、経験者ほど油断して足をすくわれる最も危険な領域だとされる。
示される実践は地道だ。結果が出るまでプロジェクトに留まること。測定の前に仮説を文書化すること。なぜその結果になったのかを体系的に振り返ること。そして筆者は、AIによる高速化が、成果に責任を持たないまま次の案件へ移ることを促し、かえって経験の蓄積を妨げかねないと警告する。速さを手にした時代だからこそ、プロダクトセンスの磨き方を見直す価値のある論考である。
出典: A Concrete Definition of "Product Sense" (and How to Build It)









